特定非営利活動法人 ITC近畿会

「情報システムの導入を成功させるために」

「情報システムの導入を成功させるために」

ITコーディネータ
技術士(情報工学部門)

 堀上 明

 私はSIベンダーに勤務して約18年になります。
 その間様々なお客さまと一緒に、多くの情報システムの開発を担当してきました。
 計画通りに、情報システムの開発・導入ができたこともあれば、逆になかなか思うようにいかなかったこともあります。
 今回はその経験を元に、ユーザーがSIベンダーに情報システムの開発を委託する際の、成功のためのポイントを述べたいと思います。

1.要件を明確にする
 例えば家を建てる際、工務店に「2階建ての、4LDKの家を建てたいから、見積りを持ってきてくれ」と言うのと、「2階建ての在来工法の木造住宅を建てたい。間取りの案も事前に送るから、見積りを持ってきてくれ。」と言うのとでは、どちらが早く家が建つでしょうか?
 前者の場合は、具体的な設計書と見積りができるまで何度も工務店との打ち合わせが必要になり、工事が始まるまで、数ヶ月かかるかも知れません。
 後者のほうは、工務店から精度の高い見積りがでてくるので、うまくいけば1回の打ち合わせで契約が済み、すぐに工事が始まる可能性があります。

 情報システムの構築も同じことが言えます。開発が始まるからということで、要件を確認するためにお客さまのところへ打ち合わせに行くと、何も決まっていないことがあります。ビジネスのコンセプトはあるのですが、具体的な質問をすると、システム化イメージはもちろん、新しい業務運用すら回答が返ってこないのです。
 お客さまは、すぐに開発を開始するつもりで我々SIベンダーを呼んでいるのですが、結局要件定義からやりなおすこととなり、開発の開始が大幅に遅れることになります。


2.機能は最初から最小限に絞り込む
 情報システムに盛り込む機能は、優先度をつけ、最初から必要最小限に絞り込んでおくことが重要です。
 あれもしたい、これもしたい。こんな機能があったら便利だ、と、どんどん機能を盛り込んでも、ベンダーが出してきた巨額な見積もりを見て、結局機能をカットすることになります。
 最小限の機能で、少しでも早くカットオーバーし、どんどん活用したほうが得策です。
 新しいシステムを使った、新しい業務運用が始まると、新たな問題が見えてきます。その時に機能追加や機能変更を行うほうが、効率的です。


3.仕様変更はできるだけ抑える、避けられないなら早く出す
 仕様変更のない情報システム開発はまれです。とはいっても、仕様変更は、できるだけ少ないにこしたことはありません。
 また、仕様変更を避けられない場合は、できるだけ早い段階で行うことも重要です。
 再度、家を建てる場合を例にあげますと、間取りを一部変更することになった場合、設計段階で変更するのと、ほぼ家が建ってしまってから変更するのとでは、影響度が大きく異なります。
 情報システムの場合も、仕様変更を行う際、あとの工程になればなるほど、影響の範囲が広がり、難易度が上がります。


4.テストには積極的に参画する
 納品前の最終のテスト段階(システムテスト、あるいは業務テストとも言います)では、積極的に関わることが大切です。
 特に業務機能の確認は、徹底的にテストしてください。要求した機能は全て盛り込まれているか、問題なく業務を行うことができるのか、例外的な業務運用にはどこまで対応できているか、など確認すべきポイントはたくさんあります。
 この確認をベンダー任せにするお客さまがいますが、最終確認は、システムを実際に使うことになるお客さまが行うべきです。
 なぜなら、業務機能の確認は、ベンダー主体では限度があるからです。また、万一不具合や、使い勝手が悪いなどの問題があった場合、迅速に修正できる最後のチャンスでもあります。
 システムがカットオーバーしてからでも、ある程度の修正は可能ですが、本番業務に影響が出るのを避けられません。また、カットオーバー後の変更は、契約上の微妙な問題が絡んでくる場合もあり、なかなかすぐには対応してもらえない場合があります。


5.カットオーバー後の運用計画も立てておく
 情報システムは、開発する時にかかる費用や期間が大きいのは確かですが、カットオーバー後の運用体制や費用も考慮に入れておくことが必要です。
 体制面では、システムの維持管理を自前で行うのかどうかが大きなポイントです。自前で行うのであれば、相応の体制作りが必要です。
 自前で行わないのであれば、ベンダーへ委託することになりますが、開発とは別の契約が必要となり、費用もかかります。
 費用面では、ハードウェアのレンタル・リース料や、ソフトウェアのライセンス料が必要なものもあります。
 その他、ハードウェアを置いておく場所、その光熱費、ネットワーク費用、実際に業務を行う人向けの教育費用など、様々な費用が必要となります。


 以上、いくつかポイントをあげました。どれも大切なことですが、この中で、どれが一番重要であるかを考えた場合、強いて言えば、最初の「要件を明確にする」ということになると思います。
 要件が曖昧なまま、情報システムの開発を進めてしまうと、カットオーバーが遅れたり、望んでいたものとは全く異なるシステムができてしまって、せっかく多額の費用を投じて開発したシステムが、使えないものとなってしまう場合もあるからです。
 一般的には、要件を整理したものをRFP(提案依頼書)にまとめて、ベンダーに要件を伝えます。
 しかしRFPの作成は、慣れていないとなかなか難しいものです。
 場合によっては、コンサルタントやITコーディネータなどの専門家の活用も有効です。

以上