第1回 経営情報システムの発展とIT投資評価

  • 2008年5月 1日(木) 01:00 JST
  • 投稿者:
    HP委員会

 今回から6回程度の連載で、IT投資評価方法の変化とそれをめぐる論争を紹介します。「このコンピュータを買うといくら儲かるか?」IT関連の仕事をしていると経営者からこのような問いを投げかけられ、答えに窮した経験を持つ方は多いと思います。ITへの投資が設備投資に比べ少額で、”先端的技術への試験的投資”と理解されていた頃は、投資対効果について、さほど問題にはなりませんでした。しかし、全設備投資に占めるIT投資の額が20%を越えている(図表:日本の情報化投資推移)今日において、IT投資は聖域とは言えなくなっています。ところが、IT投資の効果を株主や出資者に正しく説明できる経営者はどれだけいるでしょうか?

1.IT投資評価の困難性

 IT投資評価が困難な理由は大まかに言って、2つあります。第1の点は、ITの利用形態が高度化していることです。給与計算業務などでは、手作業での作業とコンピュータでの処理を比較すれば、その効果は歴然とわかります。しかし、SCM(Supply Chain Management)に見られる企業間連携と情報の共有・交換、CRM(Customer Relationship Management)のような顧客価値拡大へのIT活用などは、IT投資評価を複雑なものにしています。第2の点は、経営における適用方法によって、投資効果が変化するという点です。同一ベンダーのERP(Enterprise Resource Management)パッケージソフトを導入して、成功している企業もあれば失敗している企業もあります。また、導入効果も企業によって大きく異なります。つまり、IT投資の効果を規定するのは、IT以外の経営資源の有り様なのです。 

2.IT投資評価手法の発展

 IT投資評価の方法は、経営情報システムの発展と共に変化してきました。しかし、今日に至っても有効な投資評価手法は存在しないと言われています。ITCの方は、バランスト・スコアカードを使用してIT投資評価に活用されている方も多いと思います。バランスト・スコアカード(以下、BSCと略す)の有用性は高いですが、多様なIT投資評価をBSCだけで行うことは出来ないでしょう。IT投資の特性に適した投資評価手法を使い分ける必要があります。また、投資効果の測定にとどまらず、どうすればIT投資効果を最大にすることができるかも検討する必要があります。

日本の情報化投資推移図 

  <出典:平成18年度「情報通信白書」のデータを基に作成>

 本稿の目的は、IT投資評価を巡る論争を整理することを通じて、今日、どのようなIT投資評価手法が求められているかを示すことにあります。また、IT投資効果を最大にするには、どのようなIT投資に関するマネジメントが必要とされるかを検討します。

 次回以降の連載タイトルの予定は、下記の通りです。
・第2回:IT投資評価論の歴史的変遷
・第3回:”生産性パラドックス”を巡る論争が示したこと
・第4回:”もはやITに戦略的価値はない”とは?!
・第5回:IT投資評価からIT投資マネジメントへ
・第6回:IT投資におけるインタンジブル資産の役割

 

執筆者紹介
藤原正樹(ふじわらまさき)
 博士(経営情報学)、中小企業診断士、ITコーディネータ
 摂南大学経営情報学部非常勤講師
 経営情報学会・戦略的IT投資マネジメント研究部会・事務局

 

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