< サービス産業、サービス業務における経営改革・経営改善 >                           「貿易商社が経営する専門店におけるIT経営による経営改革・改善」 

  • 2008年2月13日(水) 12:02 JST
  • 投稿者:
    HP委員会

< サービス産業、サービス業務における経営改革・経営改善 > 
「貿易商社が経営する専門店におけるIT経営による経営改革・改善」
                                 

               

 ノーブルトレーダース株式会社                                                                                                                              
  代表取締役社長 辻  昇
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はじめに                                                                                                                           
 貿易商社として設立後、輸出商社、輸入商社を経て輸入洋陶磁器を中心とした直輸入直販・卸業として事業を展開してきた。時代の流れの中でインターネット販売やIT活用によるIT経営改革が企業成長に大きく貢献してきた。ここではそのIT経営、IT活用による経営や業務の改革事例として弊社の取組み等について紹介する。  

1.企業概要、事業・サービス内容及び特徴  
 弊社は32年以上の実績を持つ貿易商社で、その実績をもとに、お客様にとって『よい品をよりお求め安く』手に入れていただくために、1989年店舗販売を開始。そして1997年、インターネット店『ブランド洋食器 ル・ノーブル』を立ち上げた。「ブランド洋食器ル・ノーブル」は、バカラ、ウェッジウッドなどの輸入食器をはじめ、インテリア・キッチンアイテムなど、世界中の優れた商品を取り扱う専門店として、関西に実店舗6店、ネット店3店、モバイル店3店で展開している。参考までに現在の企業理念・会社概要は別表のとおりである。
 海外の良い商品を現地並みの価格で求めていただけるよう、毎年卸販売を減らし直販売強化、在庫販売、専門店化を図ってきた。今では、開発輸入から直接販売までの全プロセスを自社で把握、管理が出来るようになり、直販店とネット通販で売上の90%以上を顧客への直接販売として占めまでになった。
 情報発信や商品企画、仕入れから販売までの情報化等による一貫システム化により、お客様の満足感、納得感、安心感にこだわり、お客様の豊かな生活に貢献したいと考えている。  

  表 1

2.経営課題とIT化の目的と取組み 
 (1)事業環境と経営課題
    32年以上貿易業に携わり大手量販店の海外開発商品輸入まで手がけるが、販売を他社任せにすると最終ユーザが見えず情報もないことにより、販売計画について主体的・自立的に立案ができない下請け的な事業・業務となってしまう課題があった。その中で、自立化へのアンテナショップの開設、自社直輸入、直販売体制の構築、自社店舗を拡大と立地条件の良い場所に移転する為のスクラップ&ビルドを進め、販売効率を高めてきた。またネットショップにて全国展開をすることにより更なる販売効率アップを実現、更にユビキタス社会対応の為のモバイルショップ(ドコモ、ソフトバンク、AUの公式サイト)の開設や次世代ネットワーク対応体制の確立へ取組んできた。
   

  図1

(2)IT化の目的と取り組み
   上記の経営自立化への課題に対してIT化が果たした役割は大きい。直販体制強化について、IT経営の側面からの取組みを下記に述べてみたい。
1)自社直輸入体制の構築
    社内にブランド洋食器専門の輸入部門を作り、徐々に仕入先を現地有力小売店から輸出代理店、更に中間業者を省いたメーカとの直取引、もしくはメーカ指定の輸出代理店間で仕入先ルートを確立してきた。それにより安定供給が可能となり、大量購入により物流コスト削減、仕入れコストも削減、又メーカによっては円契約で為替リスクを回避できるようになった。
    又年間仕入計画により、更に仕入れコストを圧縮できるようになり、メーカとも協力体制を構築でき、予算達成ボーナスまでもらえるようになった。
    本社倉庫新築とコンピュータ管理による自動倉庫については、本社400坪の敷地に720坪の本社倉庫を建設、うち三分の一部分は自走クレーンつき自動倉庫とし、40フィートコンテナ20台分の収納が可能となり、ロケーション管理により全商品の即時在庫即出しが可能な体制を整えた。
2) 自社直販体制の構築
    直営ショップ展開で店舗運営ノウハウを習得、その後拡大に向け好立地条件を求め段階的に更に良い立地条件を求め移店を繰り返し、現在6箇所のショップを展開している。 原則的に広さの50坪を基準について、関西では更に好立地を求めにくくなり、ネットショップの展開にウエイトを移してきている。ネットショップは広さの制限がなく、一度作ったページはそのまま残り、ページ数増やすことで情報データを無制限に増やすことができ、またネットショップは社内で一元管理できる為、人的・物的に管理しやすく、問題時にも即応が可能となった。
 3)Web販売の構築(インターネット店)
    Web販売の構築は以下のステップを踏み、作り上げてきた。
        a)1997―1998年
           メニューを並べたシンプルデザイン、受注はメール    
        b)1998―1999年
        データベース化による注文システム構築、会員管理、商品管理システム、メールマガジンを発行                    
        c)1999年11月―2000年6月 
           商品検索機能、会員専用ページ、セキリュテイSSL、商品アイテム1000点超える                        
        d)2000年7月―2001年10月 
           商品以外のコンテンツ整理、より細かなコンテンツの発信、全商品一覧ページ掲載  
        e)2001年11月―2004年9月 
           タブ分けによる情報セグメント化、検索機能追加詳細写真の掲載、特集ページとメルマガ強化、直営店連動、
      会員特典サービス開始    
        f)2004年12月―2006年12月
          複数カテゴリの設置、ギフト販売システム商品点数5000点突破、お客様ページ強化                       
        g)2006年―2007年
           携帯ショップ公式サイト順次オープンドコモ、au,softbank                            

  この様なステップを踏みながら販売高を上げてきたが、システム構築の必須条件として、フロントサイドの販売強化だけでなく支援部門も併せて強化しないと売り上げは伸びないという事である。つまり以下の様な構築や運用ができていないと上手く処理できないことが良くわかった。
     a)物流機能・バーコードによる単品管理の構築
     b)全社オンラインシステム化による計数管理・日次決算の構築
     c)情報共有・ナレッジの構築によるコミュニケーションの向上

3.企業・情報システムの概要と特徴
(1)企業トータルシステムの概要 
 全体システムのイメージとしては、図2の示すとおり、仕入、物流倉庫、販売、経理が一貫した流れになっており、情報も一元化され、トータルな一貫体制システムとなっている。

  図2
 

(2)業務システム:
 1)基幹システムの基盤
  InterNet VPN(※1) +  MetaFrame(※2) を採用し、拠点間のリアルタイムな情報閲覧を実現している。基幹システムは、受発注卸業務、店頭販売(POSレジ)、ECサイト連携、経理システム連携、在庫管理、顧客管理、販売管理、仕入分析システムを装備し情報の一元化を行っている。
 2)業務システムの概要
 a)販売・店舗システム
  POSレジにてポイント管理、各拠点でVPNを構築し、リアルタイムで在庫情報を閲覧可能となり、顧客からの問い合わせに即時対応ができる。
 b)ECサイト
  バックグラウンドが異なる複数のインターネット店舗データを連携して、注文から出荷までの処理を一元化し、実店舗、インターネッ             ト店舗双方で会員ポイントの管理が可能となっている。また、顧客自身が注文の進捗状況を確認出来るページを連動することにより、顧客  満足度向上と作業効率化を実現した。
  c)基幹システム(販売・在庫・仕入れ・物流・経理システム等)
  オーダー時に作成したデータを元に、発注から仕入計上までの入力作業を軽減、定型のシートを活用し、非定型な海外発注のエントリ処理の統一を実現した。具体的には商品情報をデータエントリし、受注オーダーに反映する事で、確認だけで済むように入力業務を軽減している。売り上げ個別明細を自動消し込み行う経理システム、各店からの在庫移動、卸売り出荷指示など自動倉庫に連携した物流システム等となっている。そしてこれらのDB情報を分析し、仕入・販売実績などマーケティングにも活用している。
 d)情報共有・ナレッジシステム
  各拠点から社員全員が参加できる社内ナレッジを運用している。商品情報や日報はもちろん、音声や映像データまであらゆる情報を備蓄・共有し、意見交換の場だけではなく、eラーニングとしての側面も持ち合わせている。

4.成功・苦心及び反省点
1)実店舗あってのEコマース(トータルバランス化)
  販売店経営を通じて販売ノウハウを会得し、その販売ノウハウを通販ネット販売に応用できる。実店舗があることでお客様は安心され、又ネットだけでは解らない質感、色合いが実物で確認することが可能である。
  全てのお店は行きやすいJR沿線か阪急沿線、しかも主要ターミナル駅近くに立地している。実店舗の苦労は店員の確保であり、小売店は人材確保が難しい業種となっている。
2)Eコマースにおける情報発信、売り手の努力をはっきり見せる
  毎日のように入荷情報、商品情報、陶磁器にまつわる情報などを更新し、開示情報として満載している。情報発信も毎日の継続的努力がないと実らない。更に検索しやすいシステム構築に改良中で、システムも常に改良・改善をしないと陳腐化するので、常に投資が必要と考えている。ネットショップは既に個人商店レベルでは存在できないほど激化している。毎日、毎日の積み重ねが非常に大事な要素となってきている。


  図3
 

3)ITの継続と習慣化及び教育
   社内研修(主としてOJT)と社外研修があり、販売体験として、自社店舗にての販売研修1ヶ月から3ヶ月、入社3年後には海外での買い付け同行研修、海外見本市参加研修などがある。また、商工会議所や参加各団体をはじめとする、勉強会に参加する研修も実施している。
 

   図4
 

5.成果及び効果
1)事業及び市場・販売高の拡大
  全ての業務・マネージメントにおいて、IT投資により効率化が図れた。実店舗とネットビジネスの両立や会社の仕組みづくりそのものに大きく貢献している。今の自社一貫体制はITへの投資が無ければ実現していません。注文からアフターフォローまでのクイックレスポンスを実現し、フロントとバックのトータルバランスを実現するシステムの構築が、お客様に安心感と満足感を提供し顧客の定着につながっている。
2)店舗、諸経費等のコスト削減
 IT活用によるIT経営は店舗経費削減にも大きく貢献している。広域新聞広告費、通信費、実店舗出店テストなどが圧縮でき、また情報の共有化により、方向性の統一を図る事ができた。
 新聞広告を例に取れば日刊新聞では一回120から190万円これを年6回していたのを全廃し、更にチラシ広告も減少させたが売り上げは変わらなかった。新規開店には、保証金3000から12000万円、お店つくりに2000から3000万円は必要である。一年後閉店すると5000万円くらいの損害が出る。石の上に3年の長期のお店運営はダメ、見切りのよさが必要なのが今の小売店である。
3)情報共有・ナレッジ化によるスピード化
 社内LANシステムは基幹データシステムと同じくらい大事であると思っている。社内掲示板なれど、映像、音、写真、文章、いろんな情報がストレスなく流せ、誰でも、どこでも発信、受信できる社内ユビキタス社会の実現を目指している。


  図5
 

6.今後の課題及び計画
 事業の環境変化や事業の拡大に合わせ、次へのステップアップの為に以下の点を今後の課題として考えている。
1)課題
  業務の再構築を行い、簡素化、さらには省略化を実施し、日々蓄積した情報をより活用させる仕組みを発展させ、情報を元にFAQの構築や、マーケティング等への活用も行っていきたいと考えている。フロントのECサイトのデジタルとヒューマンタッチの融合、新店舗リリース、国際化への対応等である。
 2)今後
  先行投資し続ける事が、将来につながるかに大きく関わってくると考えているる。ITを活用すれば、中小企業であっても大企業並の武装が可能であることを今までの取り組みを通して実感している。今後も中小企業の特質を生かし、地についたビジネスを心がけていきたい。日々の継続をベースに、フロントやバックヤード等トータルにバランスの取れた、顧客に支持されるより良い企業経営システムの構築に向け努力していきたいと考えている。
  
                                                                              以上

<参考>
1. 関西IT百撰2006年度優秀賞受賞
     http://www.it100sen.com/it100senslct/slct_2006.html
     http://www.it100sen.com/it100senslct/data/2006/data8.html

2. ホームページコンテスト京都2005 
     審査員特別賞「eコマース賞」受賞等多数

3. 企業紹介 ノーブルトレーダース株式会社
     http://www.le-noble.com/

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(注)
  ※1  Internet VPN(Internet Virtual Private Network)とは
 インターネットを経由して構築される仮想的なプライベートネットワーク(VPN)のこと。インターネットVPNを経由することによって、機密を保持したまま遠隔地のネットワーク同士をLANで接続しているのと同じように運用することができる。
 インターネットVPNではバックボーンにインターネットを使うため、回線を維持するための費用が非常に低く、専用線などと比べて極めて低コストで運用することができる。インターネットを流れるデータはそのままでは盗聴されてしまう恐れがあるため、インターネットVPNではIPsecを使用して通信内容を暗号化し、機密性の高いデータを通信できるようにしている。
  IPベースのネットワークを利用した仮想LANとしては他にIP-VPNがあるが、一般にコストではインターネットVPNが優れ、品質や信頼性ではIP-VPNが優れているとされる。

  ※2 MetaFrameとは
 Citrix社が開発した、Windows 2000 Serverなどのサーバ系Windowsが備えるターミナルサービスを利用するためのクライアントプログ  ラム。Microsoft社が配布しているクライアントプログラムはWindows 95以降のOSとTCP/IPプロトコルにしか対応していないが、MetaFrameサーバ経由でWindows Serverのターミナルサービスを呼び出すことによって、ターミナルサービスをこれ以外の環境からも利用することができる。
 また、MetaFrameサーバの負荷分散機能を利用することによって、Windowsを含めた対応OS全てからのアクセスを空いているWindows Serverに振り分けることも可能。
 MetaFrameが対応しているOSはWindows 3.1以降、MS-DOS、Mac OS、Java、Solaris/SunOS、Linuxなど非常に幅広い。

                  以上 「IT用語辞典 e-words」より 
 

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