< サービス産業、サービス業務における経営改革・経営改善 >                              「旅行業におけるIT経営によるビジネスモデルの変革と構築」

  • 2008年2月 8日(金) 16:57 JST
  • 投稿者:
    HP委員会

< サービス産業、サービス業務における経営改革・経営改善 > 
「旅行業におけるIT経営によるビジネスモデルの変革と構築」

                              
 株式会社ホワイト・ベアーファミリー
 代表取締役   近藤 康生 

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1.はじめに
創業より30余年、この間旅行業を取巻く環境は大きく変化し、弊社も従来のビジネススタイルからシフトし、インターネット社会において現在のITを基盤としたビジネスモデルへ変化を遂げてきております。現在もなお経営・事業において改革・発展への途上でありますが、現在に至る経営・事業の変革及びIT活用経営の一端をここに紹介します。
 本稿に掲載のIT経営実践前とIT経営実践後のシステムイメージ、またIT経営における背景、効果等の概要図についてもあわせてご参考いただければと思います。

2.会社及び事業概要
(1)我社の紹介
株式会社ホワイト・ベアーファミリーは、1977(昭和52)年に創業の中堅規模の旅行会社であります。
創業のルーツは、関西の私立大学からスタッフを集め、スキーバスツアーを企画したのがはじまりであります。以来、自社で交通機関や宿泊施設などを直接仕入れて、オリジナリティの高い旅行商品を企画・販売することで大手旅行会社との差別化を図ってまいりました。国内と海外の旅行商品の売上比率では8:2と国内が多く、国内旅行では、全国主要空港から格安で手軽に出発できる個人型のパッケージツアーを多くの方に提供できるように、札幌から沖縄まで全国主要都市に営業所を設置いたしました。特に沖縄と札幌方面に最も力を入れており、ダイビングやスキーツアーなどを中心に企画・販売している。一方、海外旅行は国内旅行よりも取り扱いは少ないが、グアムやバリを中心とした旅行商品を企画・販売しております。
特にグアムとバリは関連会社が現地事務所を運営し、きめ細やかなサービスと低価格商品の提供に努めています。
 

会  社  概  要
・名称 株式会社ホワイト・ベアーファミリー
・本社所在地 大阪市北区豊崎3-14-9
・設立年月日 昭和56年5月1日
・資本金 3375万円
・業種・業態 旅行業
・従業員数 125人
・売上 80億円
・URL http://www.wbf.co.jp/

 (2)経営・事業環境
しかし、ここ数年、旅行業界は、大変厳しい状況にあると感じております。その主な要因は、インターネットの普及により、利用者がホテルや航空チケットの予約を直接行い、自分たちで旅行プランを立てるようになったのは、大きな環境の変化だと認識しております。そのうえ、IT系企業が旅行関連のサイトビジネスを展開するようになり、旅行業界の限られたマーケットを侵食するようになったという現実も・・・。
現在、国内の旅行会社は1万社以上あり、その中で4,000万円以上の利益を上げている会社はわずか100社に過ぎないという現状。それだけ利益を上げるのが難しく、競争が激しくなっているのが実情です。

3.経営のIT化への取組みと経緯
(1)第1次 : 初期の段階
我社がサイトビジネスを最初に手がけたのは1995年で、ビジネスホテルの予約サイトを開設したところが、たまたま同時期に、圧倒的な資金力とマンパワーを有する会社が同様のサイトを開設したため、これでは勝ち目がないと早々に見切りをつけて撤退しました。
その後、スキー客の宿泊施設に特化した予約サイトや航空券の販売サイトなども開設しました。そして、2001年頃から本業であるパッケージツアーをWebサイトで販売するビジネスを展開するようになりました。

(2)第2.1次 : システムを創る(ベンダー委託)
当初は、システムの開発会社が運営している旅行・宿泊予約サイトを通じて、個人向けパッケージツアーの販売を行っていました。しかし、使用していた旅行業システムが、団体旅行向けのものだったので、当社が個人向けパッケージツアーの開発モデルとなり、システム開発会社と協業して1年くらいかけてシステムを構築しました。
個人型のパッケージツアーは、宿泊施設だけでなく、飛行機やレンタカーなどの予約も必要になり、それらを組み合わせてお客様に提供することになります。それには、旅行会社ならではの職人技ともいえるノウハウが必要になるので、ホテルの予約などを単体で行っているサイトにも十分勝てると考えたのです。
ところが、システムの開発パートナーが、当社が考える先進的なビジネスモデルについていくことができず、結果的に当社の要望を完全に満たすシステムにはなりませんでした。
当社では、これまで以上に、一人ひとりのお客様にきめ細かなサービスを提供することを考えていました。具体的には、パッケージツアーの予約ができないときに、その理由は、「ホテルに空室がないのか」、「飛行機に空席がないのか」、あるいは、「レンタカーに空車がないのか」、そうした細かい情報までリアルタイムに提供できるよう、さまざまなお客様のニーズに応えられるようにすることを考えていたのです。しかし、以前のシステムではそれを実現することは不可能であったのです。そこで、当社は、自分たちが理想とする旅行商品販売サイトを自社で構築することを決断しました。

(3)第2.2次 : システムを創る(自社開発)
以前は、ベンダーの営業担当者が、こちらの要望をヒアリングしたうえで、内容を開発担当SEに伝えていました。そのため意図が伝わりにくく、満足できるシステムにはならなかったのです。そこで、今回(2003年当時)は、初期段階からSEの方とコミュニケーションを取りながら進めていくことができました。その結果、我々の要望を的確に反映したシステムを効率的に開発することができたのです。
まず、比較的リスクの低い海外旅行商品の予約システムから開発を行い、2004年6月に海外基幹システムを連動したWeb海外予約受付システムを本稼動させました。その後、システムトラブルもなく順調に稼動し、軌道に乗ったことから、2005年2月に新たに国内基幹業務システムを連動したWeb国内予約受付システムを本稼動させました。
新システムは、ユーザビリティが高く、我々にとっても非常に使いやすいシステムだったので、以前に比べ格段に良いものになりました。しかし、当時、国内向けパッケージツアーの販売は、他社が運営している旅行・宿泊予約サイトを通じて行っていました。そこでは毎月数千万円の売上があったので、アクセスの多いサイトから自社サイトに移行したら、売上が一時的に落ちるだろうと覚悟していたのです。実際、売上は一時的に落ちましたが、Web国内予約受付システムを本稼動させてから約1ヵ月後には、元の売上を上まわり、今では大幅に拡大することができました。

4.システムの特徴と導入効果
(1)Webシステムと基幹システムとのシームレス化が格段の効率化
弊社の基幹システムの概要は「国内旅行・海外旅行基幹システム構成図」に示す内容となっています。基幹業務システムとシームレスに連動している点が、一般的なWeb予約受付システムとは大きく異なる点でありました。これにより、旅行業務の徹底的な効率化を図り、人手をかけずに顧客満足度の向上を実現するWebシステムを構築することに成功しました。
今回構築したWebシステムでは、基幹業務システム上の旅行商品の販売在庫(残席・残数)をWeb上にリアルタイムに表示し、24時間予約受付まで一貫して行えるようになっています。その後2005年6月より携帯電話より予約できるシステムを開始し、管理面に関しては財務、経理、月次決算までを一元管理できるシステムを構築しています。
現在インターネットによるパッケージツアーの販売は、全社売上げの約80%以上をWEB媒体(インターネット媒体)が占めるまでになっています。
さらに、販売提携している大手ポータルサイトへの商品データの入稿も簡単に行える仕組みにしています。これまでは、各ポータルサイトへの入稿作業にかなりの時間を費やしていましたが、その解決策として、基幹業務システムの商品データを事前に、各ポータルサイト向けフォーマットに変換して登録できるように開発いたしました。
また、大阪本社と全国主要都市の拠点間はインターネットVPNで結ばれており、合計120台以上の各拠点のクライアントPC上からWebシステムに快適にアクセスできる環境を実現しています。
今回の基幹業務システムとシームレスに連動したWebシステムの構築により、インターネットを活用した旅行業務が格段に効率アップいたしました。それにより、当社の強みである企画提案型の旅行商品の開発に注力できる環境が整いました。

※ <国内旅行・海外旅行基幹システム構成図>

 (2)Web化による多様な商品企画及びスピードアップの実現
IT系企業の宿泊ポータルサイトに打ち勝つためには、お客様に喜んでいただける企画提案型の商品をいかに早く、たくさん提供できるかにかかっています。そのためには、旅行業務の徹底した効率化を図る必要があります。その点、今回構築したWebシステムでは、各ポータルサイトへの入稿処理を含め、パッケージツアーの予約受付や販売価格の変更処理、さらには社内的な精算処理への落とし込みまで一貫して行えるようになり、かなりの効率化を実現しています。特に旅行商品は、日々価格が変動すると言っても過言ではありません。というのも、受注状況が悪ければ、販売価格を下げざるを得ないからです。
 取引先である宿泊施設などの集客状況により 綿密な旅行商品のスピーディな展開が必要であり、こうした作業はWebを使ったシステムでないと実現できないのです。印刷物を作成し販売するのでは、時間がかかりすぎるのです。 基幹システムの構築によりそれが実現できたことは大きな導入効果であったと感じております。
 また自社開発の基幹システムの機能のひとつに商品企画ごとの粗利益のシミュレーション機能があります。この商品企画のシミュレーション機能は最短で約15分?30分でWEBに商品展開ができ、価格競争力のある商品を素早く展開することを実現し事業経営に貢献しています。

(3)旅行パンフレットがなくなる
以前は、旅行商品のパンフレットを数多く作成して各旅行代理店の営業所で販売、新聞や旅行雑誌に広告を出して集客を行っていましたが、現在は、インターネットを活用した販売展開へ大きくシフトしています。
2007年団体旅行を中心とした手配旅行営業マンを廃止いたしました。また、一部の例外を除き旅行パンフレットの作成を廃止いたしました。我社は、営業マンや旅行パンフレットを否定しているのではありません。よりインターネットビジネスに特化するためには、既存ビジネスの手法を切り捨てる必要性を感じたのです。
より効果的に旅行ビジネスを展開するためには、IT、WEB戦略を推し進めてゆけるようにと考えております。

5.他の事業・経営取組みにつて  
(1) 教育訓練プロジェクトとWeb技術の全員習得へ
WEBでのビジネスでは、より効率的に旅行商品をスピーディに展開する必要があるため2006年1月にマーケティング部を新設しました。当時は、営業所ごとに独自のドメインを持ち WEBサイトの運営をしておりました。札幌から沖縄までの各営業所でのWEBビジネスには温度差があり、全社を挙げてのWEBレベルアップの必要性を、痛感しておりました。マーケティング部の数ある業務のひとつに教育訓練プロジェクトがあります。
 2007年、全社員を対象に全員がホームページを作成できるように、まる2日間の合宿を10数回に分け実施しました。2日間の合宿は、マーケティングの社員が講師となり、コピーライティング、基幹システムを利用しての商品の生成、Photoshop Fireworksを利用した画像作成、Dream weaverを利用してのHTMLの作成などそして課題の提出などの集中研修合宿で社内では通称「トラの穴」と呼ばれております。
 ベテラン社員から新卒の新入社員までの全員受講の研修により、社内にWEBが苦手ですなんていうことは、通用しなくなりました。一部の担当者任せにするのではなく全社員がWEBに対する取り組む風土ができたのではないかと感じております。
 また 各営業所には、WEB担当者を配置し各現場の販売体制をつくる体制を築きました。技術的には、専門職の方には、およびませんがスピーディにWEBにて商品情報を展開する体制は整えられました。

(2)顧客の視点に立った旅行の品質・サービスの向上・改善へ
2004年11月ISO9001:2000の認証取得いたしました。品質マネジメントシステムの数ある規格要求事項に測定、分析および改善があります。我社の顧客満足度調査においてツアーをご利用いただいたお客様にアンケートにご協力をいただいております。WEBにてご予約いただいたお客様を対象に、お客様のマイページにてアンケートにお答えいただき ご利用いただいた旅行代金に応じたポイントを蓄積いただき次回旅行時にポイントをご利用いただくというシステムです。
 お客様アンケートは、100点満点で点数評価され具体的な品質目標として掲げており、アンケートの内容は、各営業所の現場責任者(リーダー)が毎月、本社会議室に実施されるカイゼン会議のインプットの材料となります。
各営業所にて発生したお客様の意見に対しての対応策や各現場に施した是正内容、予防処置を報告し、全社にて情報の共有化を図るのです。中途半端な対応には罵声が飛びます。アンケート調査でのお客様は、まさに氷山の一角、徹底的に継続的改善に取り組むのが「カイゼン会議」です。
過去にアンケートはがきを実施したことが数年間ありました。紙ベースのはがきでの情報収集は、その情報を集計することも難しく、また閲覧するにも時間がかかりお客様の声を反映することは難しいものでした。
アンケートのIT化により、リアルタイムの顧客満足度の調査が可能となり、現在では「お客様の声」は大きな経営の資源となっております。アンケートの内容は「クレームの声」「喜びの声」に分類され、旅行サービスの品質確保、継続的改善に反映される仕組みとなっており、お客様の「クレームの声」「喜びの声」は、お客様の了解を得たものはWEB上に公開され、お客様の声に対して当社担当従業員がコメントを返信し、お客様のマイページにて確認が取れるようになっています。

※ <IT経営実践前、IT経営実践後>
  

※ <IT経営の導入背景・効果>
   

       

6.今後への課題と計画
さらに今後は、Webシステム上ですべての業務が完結できる「IT旅行会社」へとビジネススタイルを大きく変革していく考えであります。
今後の展望として、Webを最大限に活用した「IT旅行会社」として、企画提案型の旅行商品を武器に他社との差別化を図っていくことを考えております。


<参考>
1. 関西IT百撰 2006年度優秀賞受賞
http://www.it100sen.com/it100senslct/slct_2006.html
http://www.it100sen.com/it100senslct/data/2006/data9.html 

 2.IT経営百選 H18年度最優秀賞受賞
http://www.itouentai.jp/hyakusen/h18/pdf/s_63.pdf

 3.ISO 9001:2000 認証取得(平成16年11月) 
                                    以上
 

 

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