第5回 経営革新支援の3点セット

  • 2008年1月 1日(火) 01:00 JST
  • 投稿者:
    HP委員会

4.BSC構築支援ツール

 BSCを構築する際に、経営者や社員から意見を出してもらい、その意見を発展させて戦略や、重要成功要因などを確定していくことが多い。
意見を出したり、集約するためのツールを、いろいろ工夫すると、BSC構築をシステマティックに進めていくことが出来ることがわかった。

(1)カード
 意見を述べる際に、カードに意見を書いてもらって、集約したり、関連性をみていくのが比較的簡単である。カードは、名刺サイズ以下のものがよく、裏に糊のついていない場合は、机の上に広げて置けばよいし、裏に糊がついている場合は、黒板に貼り付けて、全員でカードを見ながら、意見をまとめていくことが出来る。
 短所は、意見がまとまったところで、清書するのに時間がかかることである。

(2)パソコンとプロジェクター
 パソコンのMicrosoft  OfficeのWord、Excel、PowerPointなどの画面をプロジェクターでスクリーンに投影しながら、全員の意見を発言の順に記入していくと、他の人の意見を参考にしながら、関連する意見を引き出すことが出来る。
 その後、画面上で、意見を求めながらCut&PasteやCopy&Pasteで、意見をグルーピングしていくと、参加者の目前で意見がまとまっていき、しかも、最終画面を議事録として、その場で配布することができる。例え、検討の途中で時間切れになったとしても、そのままデータとして保管でき、次回は、そこから検討をスタートさせることが出来るので、便利である。
 ITコーディネータであれば、誰でも活用できるスキルである。

(3)BSC構築支援システム
 さらに簡単にBSCを構築するために、BSC研究会メンバーのひとりが、図表11の「BSC構築支援システム」を開発した。企業理念と外部環境・内部環境から企業ビジョンを策定し、SWOT分析をおこない、それが連動して戦略マップにつながり、BSCに体系化していく過程をシステム化したのである。スクリーンに投影しながら進めると、議論が活発になった。

 図表11 BSC構築支援システム画面

「戦略創造WEB http://www.e-senryaku.jp/

5.コーチングスキル

 我々が支援した中小企業の11社は、BSC導入支援会議において、経営者、幹部社員をはじめ一般社員、パートタイマーに至るまで、ほぼ全社的に参加して頂くことができた。支援企業の中には、時として会議が社長の独断場となるようなワンマン経営の企業もあり、社員の意思や意見が表明しにくい状況を感じることがあった。BSCの目的と意義からも、また特にアクションプラン策定時には、企業の最前線にいる社員の既成概念にとらわれない自由な発想が必要となる。
 コーチングは、クライアント(社員)に自ら考えるための問いを投げかけることによって、クライアントの持っている目標を明確にさせ、その達成に向かってクライアント(社員)自ら行動を起こす環境を生み出すスキルである。BSC支援を行うコンサルタントには、社員から潜在的な発想をスムーズに引き出すことが求められ、議論を活性化させる責務を負っているので、コーチングは必須のスキルであると言える。

 コーチングスキルで関わっていくやり方の例をつぎに示す。
(1)発想を広げたい時
   例えば、SWOT分析の4つの象限を示して、強みや機会が少ないことに気づいてもらい、この会社のよさ、潜在化しているビジネスチャンスに焦点をあててもらう
(2)発言が出なくなり暗礁に乗り上げた時の問いかけ
  ・もっと違った視点で考えると、どのようなことが見えてくるか
  ・この項目を、更に具体的に見てみると、何か出てこないか
(3)目標達成度を高める時の問いかけ
  ・更に、挑戦的な立場で考えると、どのようなことが見えてくるか
  ・経営理念を実現する立場から考えると、どのようなことが見えてくるか
(4)モチベーションを高める時の問いかけ
  ・すばらしい発想だ。更にチャレンジしようとしたら、どうなるか
  ・いい考えだ。これが実現した時には、どのような会社になっているだろうか

6.おわりに

 BSCは、トップダウンとボトムアップが融合して経営を革新していくプロセスであり、BSC構築支援ツールやコーチングスキルを駆使すると、中小企業の経営革新に大いに貢献できることが実証できた。

       経営革新支援の3点セット
・プロセス 「BSC」
・ツール   「BSC構築支援ツール」
・スキル  「コーチング」

  しかも、BSCを活用して経営革新を推進する際、ITコーディネ?タなどのコンサルタントが介在することにより、トップダウンとボトムアップの融合が効果的に進められ、斬新で創造性ある経営革新の成果をあげることが出来た。
 今回の実験を通じて得たノウハウを活用して、その後、中小企業の経営革新支援を始めているが、経営者・経営幹部・社員を巻き込んだ経営革新をすすめることが出来、経営者から大変喜ばれている。
 今後は、このBSCノウハウを多くの中小企業経営革新支援プロセスに適用して経営革新の成果をあげ且つノウハウの蓄積・充実を図ると共に、このノウハウを多くのITコーディネータを始めとするコンサルタントの方々にご紹介し、普及を図っていきたい。   
 多くのコンサルタントが、BSCを活用することにより、中小企業の経営革新支援と発展に貢献していくことができると確信している。

以上。 

執筆者紹介
おのえ経営事務所 尾上康之
繊維メーカーを定年退職後、2001年おのえ経営事務所を開設。大阪豊能地域中小企業支援センターでサポータとして6年間、中小企業の経営革新支援に従事している。経営戦略立案プロセスにバランス・スコアカードを活用すると、経営者の理解を得やすいことを体験したことをきっかけに、コンサルタント仲間でBSC研究会を立ち上げ、実践研究を継続している。ITコーディネータ、中小企業診断士、物流技術管理士、CPCCコーチ。

 

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