いよいよ最終回です。
CADの種類の説明から始まり、特に機械系といわれる分野の汎用2次元CAD、3次元CADの発展経緯を辿りながら現在の状況を勉強し、それらCADを選択・導入するに当っての勘所を、それぞれが商品ライフサイクルのどの位置にあるかの視点を持ちながら、お話しをして来ました。
今回は締めくりくりとして、CAD導入後の評価の勘所についてお話します。
6.CAD導入後評価の勘所
前半は、過去に2次元CADを導入した後に行われていた採算評価の考え方の例、
後半は、3次元CADの導入の目的分類と、それぞれの評価の考え方の例、
を紹介します。
そして最後に、これからどんどん行われてゆくであろう、3次元CADとPDMシステムなどで構築する総合技術情報システム導入後の評価に、バランススコアカード的アプローチを採ってみた場合の例を紹介してみました。
(1)過去の導入採算評価
2次元CADの導入初期はCADが高価であったため、まず「○○CAD導入計画」のような計画書が出され、導入後1?2年を経過したころに、計画書に書かれていた目標効果と、導入後に得られた効果を定量的、定性的に比較し、最終の投資採算性の評価をすることが多かったようです。
その時に使われた定量評価用の項目は;
●投資額 : CADの初期導入一時費用と年間保守・運用費用
●得られる効果 : 手書きと比較しての削減人員もしくは削減工数の金額換算
のようなものでした。
定性的評価は定量的なものを補足する目的として付記され、マイナス面は記述せず、
●図面品質向上 =“綺麗な図面“になった
●標準化の推進 = 共通に使える標準図面、標準シンボルの整理ができた
のようなものが多かったと思います。
工数削減効果を評価すると言っても、ある製品の図面作成に関わる工数の合計と過去に手書きで設計した類似製品の工数合計を比較することが多く、例えば新規図面作成、図面変更・修正などの作業単位ごとに手書き時代と比較し、どの作業にどれだけ削減効果があったのかを、分析・評価した会社は少なかったのではないでしょうか。
また投資金額との比較のために削減工数を金額に換算してみても、実際に設計者の数が減ったり、減った工数を利用してすぐに他の設計に移れる状況がいつもあった訳ではありませんから、CAD導入に伴う一時費用と定常的にかかるソフトの保守・運用費用の合計、すなわち投資額と、工数削減からくる機会利得金額を比較して投資採算評価をすることには、多少の無理があったように思います。
現実的には、2次元CADを導入し実際に使い慣れてみると、導入初期には“新規図面作成は手描きの方が速いが、変更・修正作業はCADの方が早い”というような下馬評が、新規図面でもCADの方が早く描けてしまい、いつのまにか、“CADが無いと仕事ができない“、という状況になってしまっているようです。
また最近は、設計者一人に2次元CADを一台を与えるのが普通と思われるような状況になっており、2次元CADの増設においては、鉛筆や消しゴムを買うようにとまでは言いませんが、CADの購入申請書に真面目な工数削減効果を書くこともないでしょうし、もし描かれていたとしても、真面目にその値を信じて承認印を押す管理者は、少ないと思います。
(2)3次元CADの導入評価例
しかし3次元CADの導入に当っては、ソフトそのものが高価なことや、一人前に使いこなせるまでの教育投資もかなり必要としますので、導入後に得られる効果をしっかりと見定めた計画書を評価し、承認している会社が多いと思います。
既に2次元CADは多くの会社に導入されているとして、その上に3次元CADを導入する場合の目的には;
A.特定設計作業の効率化
B.特定の製品の設計作業の効率化
C.設計期間短縮をスタートにした、攻めの経営ための核の一つとする
と言う三つのレベルがあると思います。
“A”のレベルを目的に置く設計作業には、
狭い空間への部品配置や当り検討、構造解析用データ作成、NC加工用データ作成などがあります。
この場合の効果は、2次元CADと同じように、その作業を手作業でする、もしくは2次元CADで行う場合からの、削減工数として良いでしょう。
“B”のレベルに目的を置く利用例には、
・携帯電話機の設計のように、曲面形状が多くなってきてことから来る、製品イメージの事前検討、派生的製品の並行的設計、そして短納期対応のために、製品・部品形状データを、直接金型製作工程まで送るようなもの
・複雑な曲面が入り混じった形状を持つ部品の金型製作のように、2次元CADではとても対応が困難なもの
などがあります。
これらの場合の効果も、手作業や2次元CADを用いた場合と比較しての削減工数でも良いですが、2次元CADでは金型の設計ができない形状部品への対応などは、一歩進んで、3次元CADを持っていることから来るビジネス拡大=売上げ増大の観点からの貢献度も、加味すべきだと思います。
“C” “C”のレベルのレベルを実現しようとしている例として、まず自動車や航空機の設計への適用が挙げられます。
そしてこのようなアプローチは、複写機など部品点数の多い製品を始めとして、どんどん適用が拡大してきています。
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このレベルは、単に3次元CADを導入するだけではなく、PDMなどとの連携ができる、総合的な設計・技術情報管理システムとならなければ達成できません。
会社の規模や扱う製品によって導入ソフトの種類や組み合わせや利用の仕方は異なってきますから、導入後の効果を、3次元CADを導入した部分に限って論じることには、無理があると思います。
この評価問題を解決するために、次章に、バランススコアカード(BSC)的な
評価方法を提案したいと思います。
(3)バランススコアカード式のCAD導入後採算評価例
SWOT(Strength, Weakness, Opportunity, Threat)分析により企業としての内部要因、外部要因を抽出した結果として、次のような戦略マップができているとします。
この評価の考え方は、CAD導入の採算報告は、ある時点の定量的評価と定性的評価を用いて行うのではなく、最終の戦略目標指標(KGI)を達成すべく、「学習と成長の視点」「内部プロセスの視点」「顧客の視点」「財務の視点」から設定した業績評価指標(KPI)値をモニタリングし、継続的に評価、改善をしてゆくアプローチを取っていただきたいと言う事です。
以上