(第2回) 汎用CADの概要と動向

  • 2007年10月16日(火) 10:00 JST
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CAD選択の勘所に進む前に,機械系汎用CADの歴史と現在の動向を簡潔に紹介します。
2.機械系汎用2次元CADについて
 
約40年前に2次元CADを開発していたのは米国のGM社、ロッキード社など、機械系に属する製品を造っている会社でした。 
その時のコンセプトは、製図板と製図道具をコンピュータの中に入れてしまうと言うもので、コンピュータの画面を製図板に見立て、仮想の鉛筆、消しゴム、コンパス、分度器、T定規などに相当する操作機能をCADソフトに用意し、図面を描こうと言うものでした。
つまり、設計手法そのものを変えようというのではなく、設計環境と設計道具を変えようとしたのです。
 
 
ロッキード社で開発され、IBM社が商用化して大成功を収めたCADAMというCADにはそのコンセプトがうまく具現化されており、今でも多くの汎用2次元CADの基本部分に受け継がれています。 
結果として、製図板環境での設計を経験者した設計者であれば、2次元CADの操作を容易に習得することができるのです。 
 
古いものを新しいものに置き換える時には、多くの便利になることと、少しの不便になることが同居するケースがよくあり、時には新しくすることへの是非論が起こったりします。
設計者には少し保守的なところがあるため、製図版による設計環境に2次元CADを導入し始めた当時にも、このような議論が起こりました。
 
論争の一つが、コンピュータの画面の小ささと製図板の大きさに起因したものでした。 
つまり、CADでは図面全体を見ながら設計をすることが出来ないという、設計者の主張です。 
その代わりに、CADには<WINDOW>という図面表示機能が備わっており、製図操作時には図形を画面枠内に入るように移動させたり、表示される図形の大きさを変更したりできるのですが、使い始めはかなり不便に感じたのでしょう。 
と言うのも設計者は、製図板の図形位置に合わせて目の位置(頭)を上下・左右・前後に動かしていたのを、逆に目の位置を変えずに、画面上の図形を上下・左右に動かしたり大きくしたり小さくしたりするという、それまでとは逆の動きをしなければならなかったからです。 
CADを初めて使う設計者は、この画面の小ささと描く図形の大きさの関係に戸惑い、今でも慣れるまでに多少の時間がかかります。
 
逆に非常に便利になったのは、描いては消す、消しては描くという、図形の修正・編集機能です。 
CADを使えば、図形をいとも簡単に消すことができますし、消し間違えても簡単に復元することができ、この特長を十分に生かせば、古い製品の図面データを利用しての図面切り貼り設計が簡単にできます。 
また標準図や標準記号を共有できる仕組みも備わっているので、会社の標準図や標準記号を予めシステムに登録しておきさえすれば、どの設計者が利用しても、図形や文字、記号の整った標準化された図面を作成することができます。
 
製図板時代には、“綺麗な図面”を書くことも、設計者個人にとっての技量の発揮しどころであり、楽しみでもありました。 
CADにより図面が均質化されてしまえば、確かに設計者にとっての楽しみの一つが減る寂しさがありますが、逆に、手書き時代の綺麗な図面仕上げに取られていた時間を、本来の設計行為に廻すことができるという、会社とっての大きなメリットがあります。
 
一方最近になって、流用設計において綺麗な図面が簡単に出来てしまうことから、CAD導入により設計そのものチェックがおろそかになり、設計品質が落ちてきていると、CAD化の弊害を指摘する人も出てきています。
 
しかし、あれやこれやの長所短所がありながらも、2次元CADは長い歴史の中で大型コンピュータからDOSパソコン、WINDOWSパソコンへの移植が行われると共に、継続的なシステム改良も加えられて来ており、今では設計環境になくてはならないインフラ道具として定着しています。
 
3.機械系汎用3次元CADについて
 
2次元CADの実用化が始まってしばらくすると、3次元空間(X=横,Y=縦,Z=奥行)に線を引き、針金細工(ワイヤフレーム)のように立体的製品形状を作ってみようとする試みが起こりました。 
第一世代の3次元CADの誕生です。
 
もし“部品”や“製品”を実物に近い3次元形状で表現できるなら、平面的に描かれた図面より直感的に設計意図を伝えることが出来るでしょう。
しかし、この段階では単なる線の塊としての立体表現にしか過ぎなかったために、現実的に2次元CADの図面に取って代わることができませんでした。 
 
それでも実設計業務に使える3次元CADを目指してあくなき研究・開発努力が続けられ、とうとう当初のワイヤーフレーム・モデル(針金細工)に、面の表現ができるサーフェス・モデル(青森の“ねぶた“=肥後細工に紙を貼った張りぼて=と似たようなもの)、立体の塊が表現できるソリッド・モデル(”ねぶた“の中に、粘土をびっしり詰めたようなもの)というデータ表現を加えることで、より実製品に近い立体形状を表現できるまでになりました。 
第二世代の3次元CADです。 
 
このCADで作った立体形状を利用することで、完成品イメージのプレゼンテーション、部品加工用NCデータ抽出、構造解析用データ作成、機構部品の動作解析などが行えたので、実務への適用が進みましたが、残念ながら部分的な設計分野への適用に留まっていました。
理由は、ワイヤフレームやサーフェイス、ソリッド・モデルを作るに当って、XYZの座標値を意識しながら直接形状要素(線、面、固体)を定義せざるを得ないと言う操作性の悪さから、設計期間内に全ての部品や製品形状をコンピュータに入力できるレベルにまで達していなかったからです。
 
その後15年を経た今の3次元CADは、入力操作性の向上とコンピュータ内に構築できた立体形状の多目的利用性の追求から、フィーチャー(意味のある形状操作の固まり)・パラメトリック(ある寸法を変えると関係する形状が連動して自動的に正しく変形される)・モデリング(3次元形状造成)型と言う、全く異なった仕組みに変貌しています。 
第三世代の3次元CADです。
 
例えば設計者は、”部品”の作り始めにまず四角い固まりのフィーチャーを定義し、これをまるで厚板のように見立て平カンナ削ってさらに薄くしたり、糸鋸で形状をくり貫いたり、錐で穴を開けたり、ノミで細かな形状を削り取ったりするような操作を繰り返しながら、実物の形状に近い“部品”を造ってゆきます。 
そして、作り上げた色々な“部品”をあたかもプラモデル細工のように組上げてアセンブリーにし、この過程を繰り返しすことによって、最終の“製品”全体までをコンピュータの中に入れてしまうのです。
フィーチャー・パラメトリッック・モデリング型CADは、“部品”や“製品”を作り上げてゆく操作過程において、設計者はXYZの座標値であったり形状要素(線、面、固体)の種類を殆ど意識しなくて済みます。 
今や自動車や飛行機のような複雑で莫大な数の部品から成る製品でさえ、3次元の“擬似部品・製品”として、コンピュータの中に構築することが可能になっているのです。
そして、一度コンピュータに入れてしまえば、“擬似製品”をもとに、試作に代わるグラフィック・モックアップ(模擬品)を作ったり、実物に近い最終製品紹介用のプレゼンテーション・データを作成することなどへの応用ができす。 
また“擬似部品”の利用により構造解析やNC加工用データの作成が行え、“擬似アセンブリ部品”をもとにした部品間の嵌め合いや当たりの検討や、連結された可動部品の動作解析を行うこともできます。 
 
最近では、個々部品の重量や表面積の計算から、全購入素材の重量計算や表面塗装するペンキの量を求めてみたり、部品形状から加工工程を推測することでおおよその部品の加工原価計算するというような分野にまで、3次元データの利用を拡大している企業もあります。
とにかく、3次元CADを使って設計期間内に“部品”や“製品”をコンピュータの中に入れてしまうことができれば、利用範囲は無限大に広がるのです。
 
2次元CADが、製図板環境での製図動作をコンピュータ環境に置き換えた単なる道具であったのと比べ、今の3次元CADは、コンピュータ時代に生まれた全く新しい設計手法を実現する設計改革の道具であると言えます。 
 
とは言え、フィチャー・パラメトリック・モデリング型のCADは万能ではありません。
その一つに、現在市販されているこのタイプのCADを利用しても、特に細かな形状の定義において操作が複雑になったり、場合によっては表現できない部品・製品形状が存在すると言う事があります。 
これらの欠点を克服するために、色々なCADメーカーにおいて、操作性と形状表現性の向上を目指した地道な開発努力が続けられています。
 
一つの試みが、フィーチャー・パラメトリック操作体系の中に、第二世代の3Dで用いられていたワイヤーフレーム、サーフェス、ソリッドの形状操作をうまく共存させる手法です。 
これはある程度実用化の域に達しています。
 
もう一つの例が、フィーチャーとかパラメトリックという形状操作方式を取らずに、第二世代CADのように直接形状を定義してゆくやり方です。 がその中では、XYZ値やワイヤーフレーム、サーフェイス、ソリッドというデータの種類を意識したと言う、第二世代CADのマイナス面の特徴を隠蔽してしまい、直感的で全く新しい操作形を構築しようという試みです。
 
後者は特にダイレクト・モデリング型3次元CADと言われ、今後のソフトウエアの成熟と、利用用途の模索が期待されています。
 
以上3次元CADの歴史・特徴を紹介してきましたが、いくら汎用CADと銘打っていても、3次元CADの利用者は部品や製品を意識しながら設計せざるを得ない操作体系になっています。
導入効果を上げるためには、メーカーにおけるCADそのものの更なる発展と、利用者側における自社の設計に合わせた設計手法の変革が、必須のものである考えます。 
その意味で3次元CADは、2次元CADに比べると導入に当たっての障壁は高いと言えます。

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