経営を見直す第1歩は、現状の把握です。
現状分析の手法として代表的なものに「SWOT分析」があります。
現状分析は、経営改革の最重要工程といっても過言ではありません。足元をしっかり見なければ、次の一歩を踏み出せません。現状を正しく判断するため、じっくり時間をかけて実施すべきです。
ここではSWOT分析の手法を利用していきます。
この工程を簡単に済ませてしまうと、次の工程で抽出される重要経営課題は、ふだん経営者が思っている内容(結論)と同じになってきます。
なぜなら、「結論ありき」で検討(考察)してしまうため、SWOT分析や次工程のクロスSWOTが意味のない作業になってしまうからです。
SWOT分析では、会社の内外の環境についてそれぞれプラス要因、マイナス要因を見ていきます。
1.会社内の要因:会社の行動に起因し左右されるもの。良くも悪くも、会社の行動で変わる(変えることのできる)もの
(1)プラス要因 :「強み」
(2)マイナス要因:「弱み」
例)「+」技術が高い、加工設備が揃っている、
「-」コミュニケーションが悪い、パソコンを扱える者が少ない
2.会社外の要因:会社の行動に関わりのない要因や対外的な相対関係によって左右されるもの。
(1)プラス要因 :「機会(チャンス)」
(2)マイナス要因:「脅威」
例)「+」業界第3位で寡占状態、IT製品が安価、通信コストが安い
「-」大手企業が新規参入する、規制緩和
これを表形式にすると次のようになります。
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プラス要因
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マイナス要因
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内部要因
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強 み
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弱 み
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外部要因
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機 会
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脅 威
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SWOT分析を実施するときの留意点:
1.SWOT分析の実施単位
・会社規模にもよるが、全社で実施するのが理想。
・ただし、人数を絞る場合、いろいろな階層の者を参加させる。
・経営幹部だけで実施しても、現場の実態が見えてこない。
・支店単位で実施し、支店の改善に生かすことも可能。
2.SWOT分析の実施手順
(1)趣旨説明:参加者に、SWOT分析を実施する意味、趣旨を説明する。
(2)SWOT項目をポストイットに書きあげる。
・ブレーンストーミングにより自由に発言し合い、出てきた内容を書き上げる。批判はしない。
・各自にポストイットを配布して、思い思いにSWOT項目を書いたものを集める。
(どちらの方法でも構いません。)
・1回で完了させないで、2、3回に分けて実施する。時間(日)をあけた方が、別の視点から見ることができる。
(3)SWOTに分類:集められたSWOT項目を4つに分類する。
・内部要因のプラス :強み
・内部要因のマイナス:弱み
・外部要因のプラス :機会(チャンス)
・外部要因のマイナス:脅威
(4)グルーピング:同一テーマのものをまとめる。
・同一テーマのポストイットを集める。
(例)「従業員スキル」「モラル」「在庫」「設備(インフラ)」etc.
・同一テーマのもの中で同じ趣旨の内容のものを別の言葉で言い換える。
(例)「在庫」であっても、「製品在庫」or「原材料在庫」について、「多過ぎる」or「足りない」or「不良在庫」or「不安」等
SWOT項目「強み」「弱み」「機会(チャンス)」「脅威」を挙げるときの留意点:
・なるべく多くの者の意見をあげるようにする:一部の立場や部署の人の意見に偏らないようにする
・趣旨説明をして内容を理解してもらった上で、ブレーンストーミングで実施する場合は自由に意見をあげられる環境・雰囲気を作り、ポストイット配布で実施する場合は無記名で行う
・検討プロジェクトを立ち上げて検討する場合には、各部署のキーマン、所属長(いちばん忙しい人)には必ず参画してもらう
(政策と実務の両方を理解している人に参画してもらう)
・挙げる項目のレベルを統一しようとしないこと:普段の日常業務で気付いたものなど、何でも挙げる(大:事業戦略が下部層に伝わらない、小:工場にゴミが落ちている・・・・)
・「○○が△△だ」というように、主語、述語を明確に述べる
・「・・だから、・・で、・・だ」のように文をつながない:論点がぼける
この場合は、内容(テーマ)によって分割する。
・「○○したい」とか「○○すべきだ」のような将来のあるべき姿は書かない。
・プラス要因、マイナス要因のどちらにもとれる内容の場合は、主観で決める:どうしてプラス(マイナス)としたか理由も書く
(研究開発費が多い→「充実した開発が可能」ならプラス、「無駄なコスト」ならマイナス)
・「強み」を考えるときは、なぜ顧客は我が社と取引をするのかを考える:他社に行かずに我が社を選んだ理由が「強み」
・特に「強み」「弱み」の場合は、この段階でBSC(バランス・スコア・カード)の4つの視点(「財務の視点」「顧客の視点」「社内プロセスの視点」「学習と成長の視点」)に分けて考えてみる:「強み」「弱み」の場合、挙げられる件数は多いが、抽出内容(テーマ)が偏りがちになるため、広い視野で検討できるように心がける
・後で追加することもある:検討を進めていく段階で必要ならば項目を追加してもかまわない
・結論から入らずに事象を客観的に捉える:管理者は日頃から「このように改善すべきだ」というような自分なりの結論を持っていることが多く、その結論にとらわれてしまうことがあるので気をつける
当初挙げられたSWOT項目はレベルや内容がまちまちになると思いますが、とりあえず思いつくままに掲げ、その後、同類項目でグルーピングしていくと、全体像が見えてきます。
また、なかなかSWOT項目が思い浮かばないときには、次回「4.現状事業ドメインと新事業ドメインの策定」で解説する分析方法を利用して現状分析をすると、会社で取り扱っている商品や市場の現状が見えてきます。
いずれにしても、一面的に見ないで、多角的に判断することが、大切です。
執筆者紹介
堤裕司氏
コンピュータメーカーのSEとして銀行のシステム開発支援に従事。
その後、システム開発会社に移り会計システム、不動産担保評価システム、企業格付けシステム等の開発支援に従事。税理士登録後、堤裕司税理士事務所開業。税務会計支援、経営コンサルティング、IT化支援コンサルティングの他、南河内中小企業支援センターにおいて、事業承継・不動産活用・相続対策等、中小事業者の経営全般をサポート。プライバシーマーク審査員。 |