第1回 バランス・スコアカードのすばらしさ

  • 2007年9月 2日(日) 19:30 JST
  • 投稿者:
    HP委員会
  1.はじめに
 バランス・スコアカード(以下BSC)という概念を初めて聞いたのは、ITコーディネータの専門知識研修であり、体系的に良くまとまっているマネジメント・システムであると感じた。更に詳しく知りたいと思い、知識ポイント取得のための研修で、BSC研究の第一人者でおられる横浜国立大学 吉川武男教授の8時間にわたるBSC概説とBSC実践の講義をそれぞれ受講して、ますますその感を強くした。
一方、過去に自分が所属していた大企業で導入すると成果は上げられる予感はするが、今、支援している中小企業に導入するのには、相当工夫がいる気がした。その後、BSCの解説書およびその導入事例を集めたが、大企業中心であり、中小企業での導入ノウハウについて言及した報告はほとんどないことがわかった。
BSCに関してコンサルタント仲間と討議している内に、同様の問題意識を持つコンサルタントと、「中小企業向けBSC導入ノウハウの確立」を目的に、BSC研究会を立ち上げて実践研究をしようということになった。中小企業11社の協力を得て、BSCの手法を実際に導入する支援活動を、1年間にわたって実施した。
そこで得た結論は、「BSCは、トップダウンとボトムアップの融合した優れたマネジメント・システム」であり、その構築に当たっては、「対象企業の経営成熟度にあわせた対応が必要」であるということであった。
 
  「BSC構築支援ツールの3点セット」 を携えて中小企業を巡回する尾上氏
 
.BSC概説
 
 中小企業向けBSCノウハウを詳説する前に、BSCの目的、方策、効果などについてまとめてみる。BSCは、ハーバード・ビジネススクールのロバート・キャプラン教授とバランス・スコアカード・コラボレイティブ社のデビット・P・ノートン社長が提唱された経営理念を実現する経営活動である。BSCの事例としては、アメリカのサウスウェスト航空が有名であり、同社のBSCは、図表1に示している。
 サウスウエスト航空の経営理念は、「温かい心、親しみやすさ、個人の尊厳、会社の気風を大切にし、最高の顧客サービスを提供することに専念する」ことであり、1971年の会社設立時の戦略は「短距離直行便を頻繁に利用する州内旅行客に、良質で低価格のサービスを提供すること」であった。
この戦略を実行するにあたり、「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」、「人材と変革の視点」で「戦略目標」を定め、さらに戦略目標の因果関係を明確にした「戦略マップ」にまとめている。この「戦略目標」を達成するための「重要成功要因」、達成したときの「評価指標」と「数値目標」を定め、具体的な「アクションプラン」に落とし込んでいった。
 
図表1 サウスウェスト航空のバランス・スコアカード
サウスウエスト航空のバランス・スコアカード
出典 吉川武男著 「バランス・スコアカード構築」
 
サウスウエスト航空は、アメリカの国内航空会社が2001年9月におきたテロ事件以来、経営が低迷する中でも、常に黒字経営を続け、まだ就航していない地域から誘致の要請があがるほど、国民から支持を受けている航空会社である。
サウスウエスト航空の経営活動を物語風に書き下ろした、ケビン・フライバーグ、ジャッキー・フライバーグ著 小幡照雄訳「サウスウエスト航空?驚愕の経営 破天荒!」(日経BP社)には、トップダウンとボトムアップの融合した事例がふんだんに記載してあり、大変参考になった。
この感動的な経営活動こそ、BSCの真髄であると思い、アメリカの航空会社だから実現したと限定するのではなく、日本の中小企業でも実現することができると確信した。
BSC研究会では、11社の中小企業にBSC導入するためのオリエンテーションの際に、サウスウエスト航空の事例をBSCの事例として取り上げ、中小企業経営者に理解をしていただいた。
 

執筆者紹介
おのえ経営事務所 尾上康之
繊維メーカーを定年退職後、2001年おのえ経営事務所を開設。大阪豊能地域中小企業支援センターでサポータとして6年間、中小企業の経営革新支援に従事している。経営戦略立案プロセスにバランス・スコアカードを活用すると、経営者の理解を得やすいことを体験したことをきっかけに、コンサルタント仲間でBSC研究会を立ち上げ、実践研究を継続している。ITコーディネータ、中小企業診断士、物流技術管理士、CPCCコーチ。